塩屋浩三の無駄遣いとは?「贅沢すぎる」と言われた職人芸と本当の意味

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代表作『ドラゴンボールZ』の魔人ブウ役や『SLAM DUNK』の高宮望役などで強烈な存在感を放ち、2026年1月20日に脳出血のため71歳でこの世を去った声優の塩屋浩三さん

名脇役として長年アニメ界を支えてきた彼ですが、ネット上でたびたび話題になってきたのが「塩屋浩三の無駄遣い」という不思議な言葉です。

一見するとネガティブにも取れるこの表現ですが、実はファンの間では「最大級の賛辞」として使われていることをご存じでしょうか。

この記事では、塩屋浩三さんがなぜ「無駄遣い」とまで言われるのか、その理由と背景について調査しました。

目次

「塩屋浩三の無駄遣い」と言われる本当の理由

左から田中亮一さん、塩屋浩三さん、古川登志夫、龍田直樹さん
引用元:古川登志夫さんのX
左から田中亮一さん、塩屋浩三さん、古川登志夫、龍田直樹さん
引用元:古川登志夫さんのX

結論から言うと、「塩屋浩三の無駄遣い」という言葉は、「主役やラスボスを演じられる超大御所を、あえてセリフの少ない端役やモブ役に起用する贅沢さ」を指すネットスラングです。

悪口や批判ではなく、むしろ制作サイドの「この役には塩屋さんしかいない」という信頼と、それに応える塩屋さんの「圧倒的な実力の無駄使い(=贅沢使い)」を面白がって称えるニュアンスが含まれています。

唸り声だけの妖怪に大御所を起用

この言葉が象徴的に使われる例として、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(第5期)などが挙げられます。

ネット上の掲示板やファンの間では、津久井教生さん、大友龍三郎さん、千葉繁さんといったベテラン勢と共に、塩屋さんが「唸り声しか上げない妖怪の役」などでキャスティングされていたことが語り草になっています。

普通なら若手がやるような「ガヤ」や「一言だけの妖怪」に、あえて熟練の技を持つ塩屋さんを配置する。

この「もったいないほどの豪華さ」が、視聴者に「これは声優の無駄遣いだ(笑)」と言わしめる理由なのです。

見た目と「イケボ・歌唱力」のギャップ

もう一つの大きな理由は、塩屋さんが得意とするキャラクターの見た目と、そこから発せられる声のギャップにあります。

塩屋さんは肥満体や三枚目のキャラクターを演じることが多いのですが、実は本職のオペラ歌手顔負けの圧倒的な歌唱力と、渋くて艶のある二枚目ボイス(イケボ)の持ち主でした。

コミカルな見た目のキャラが、突然とんでもない美声で歌い出したり、シリアスな決め台詞を吐いたりする。

その「キャラクターの器から才能が溢れ出してしまう瞬間」に、ファンは敬意を込めて「その美声は無駄遣いだ!」とツッコミを入れるわけです。

「一人9役」もこなす驚異的な職人芸

「無駄遣い」と言われる背景には、単なる豪華さだけでなく、物理的な「兼ね役の多さ」も関係しています。

塩屋さんは、1つの作品内で複数の役を演じ分ける技術がずば抜けていました。
特に有名なのが『きかんしゃトーマス』での起用です。

一部のデータベースによると、塩屋さんは同作で「一人9役」を演じており、これは出演声優の中で最多の役数とされています。

単なる人数合わせではなく、それぞれ別のキャラクターとして成立させる演じ分けの技術があったからこその起用ですが、ファンからすれば「どこから声が聞こえても塩屋さん」という状況自体が、ある種の「贅沢な遊び」のように映ったのかもしれませんね。

また、ネット上ではこのような声も上がっています。

「大御所が端役を演じると無条件でおもしろい、みたいな消化の仕方は嫌いだから相応の役を演じてほしい

引用元:あにまんch

「ポプテピピックで声優の無駄遣いと言われて古川登志夫さんが反論してたっけな。そんな仕事選べるほど偉い立場じゃないって」

引用元:あにまんch

一部では「もっとメインでじっくり演技を聞きたい」というファンの本音や、「仕事を選ばず何でも受けるプロ根性」に対する複雑な心境も吐露されています。

ただ、総じて「塩屋さんの声が聞けるならどんな役でも嬉しい」という結論に落ち着くことが多いようです。

「映像の仕事は断る」徹底したプロの美学

塩屋浩三さん 引用元:青二プロダクション公式サイト
塩屋浩三さん 引用元:青二プロダクション公式サイト

なぜこれほどの実力者が、どんな端役でも引き受け、アニメや吹き替えの現場にこだわり続けたのでしょうか?

そこには、塩屋さんなりの「職人としての美学」がありました。

過去のインタビューによると、塩屋さんは事務所からドラマや映画など「映像(実写)」の仕事が来ても断っていたといいます。

インタビューでは、こんなふうに語っています。

その時に事務所から映像の仕事の話が来ても『スイマセン』と言っているという。昔はフィルムだったことからビデオの画面が嫌いで、『ビデオでは何度でも撮影し直しがきく』というのが質的に嫌いで、変に緊張し、全部無防備に撮影されている気がしたという。

引用元:Wikipedia(元出典:2002年のインタビュー記事等)

つまり「撮り直しがきく環境」よりも、その場の一発勝負であるアフレコや舞台に価値を置いていたスタンスがうかがえます

「何度でも直せる」という環境を嫌い、マイク前の演技に全神経を注ぐ。

そうしたストイックな姿勢があったからこそ、制作サイドも「困ったときの塩屋さん」として、難しい端役から兼ね役まで安心して任せられたのでしょう。

業界内での愛され方・沢山の声優陣からの追悼コメント

訃報に際して、長年の盟友である声優・古川登志夫さんがX(旧Twitter)に投稿した追悼コメントからは、現場での塩屋さんの立ち位置がよく分かります。

若き頃より、いつも一緒に歩んできた、僕の行くアニメスタジオにはいつもいた印象のお兄ちゃん。……みんなに《お兄ちゃん》と呼ばれていた。翼ちゃんのお兄ちゃんだったから……早すぎるよお兄ちゃん…………謹んで哀悼の意を表します

引用元:古川登志夫 公式X(スポーツ報知記事内より)

声優仲間のたくさんのXや追悼コメント

本名陽子

「ふたりはプリキュア」で共演し、キュアブラックを演じた本名陽子は「突然の悲報を耳にし、哀しみでいっぱいです。塩屋浩三さんとは、何度か作品で共演させていただきました。何といっても忘れられないのが、ふたりはプリキュアの校長先生役です。優しいお声が今も響いています…。ご冥福をお祈りいたします」と追悼。

引用元:スポニチ

山田栄子

アニメ「銀牙 流れ星 銀」などで共演した山田栄子も「おにいちゃん…おにいちゃんの訃報が、事務所から届きました。ショックです…いつもニコニコして、みんなに、“おにいちゃん”って呼ばれ、皆から好かれていた、浩三おにいちゃん…早すぎます!まだ、御冥福を祈るなんて出来ない…あの笑顔に会いたいです…
合掌……」と悲痛な思いをつづった。

引用元:スポニチ

森川智之

森川智之は「塩屋浩三さんの突然の訃報に胸が絞めつけられています。デビューの頃からずっと面倒をみてくれて、気にかけてくれていたお兄ちゃん。お互い大洋ファンで川崎時代の話もベイスターズの話ももっとしたかった。心よりご冥福をお祈りいたします」と追悼した。

引用元:スポニチ

堀川りょう

「ドラゴンボールZ」ベジータ役の堀川りょうは「塩屋浩三氏ご逝去の報に接し、驚きを禁じ得ません。声の仕事を始めた頃から知っている方。収録後、よくみんなで飲みに行きましたね。楽しかった記憶しかありません。心よりご冥福をお祈り申し上げます。合掌」と追悼した。

引用元:スポニチ

ここからは「どの現場にも必ずいる」ほど頼りにされ、誰からも愛されていた背景も読み取れます。

「僕の行くアニメスタジオにはいつもいた」という言葉こそ、まさに塩屋さんがどれほど多くの作品に必要とされ、その技術を「無駄遣い」と言われるほど惜しみなく提供していたかの証明ではないでしょうか。

新作発表直後の訃報という切ない現実

2026年1月28日、青二プロダクションより正式に訃報が発表されました。

公式発表では、以下の事実が伝えられています。

弊社所属俳優 塩屋 浩三 儀(71歳) 令和8年1月20日に脳出血のため永眠いたしました。

引用元:青二プロダクション 公式サイト

皮肉なことに、塩屋さんの代表作である魔人ブウが活躍する新章『ドラゴンボール超 銀河パトロール』のアニメ化制作が発表されたのは、亡くなった5日後の1月25日でした。

本人はその発表を見届けることなく旅立ってしまったことになります。

ネット上で「塩屋浩三の無駄遣い」と愛のあるツッコミを入れられていたのは、彼がそれだけ画面の向こう側に「実在感」を持っていた証拠です。

メインキャラであれ、名もなきモブであれ、その声を聞くだけで作品の格が上がる。

そんな「贅沢な無駄遣い」を楽しませてくれた稀有な職人声優でした。

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