田久保前市長の自宅から押収されたパソコンに、偽造されたとみられる卒業証書のデータが残されていたことが分かりました。
田久保前市長は卒業証書を偽造したなどとして在宅起訴されていますが、裁判を前に「本人は作成していない」として無罪を主張する方針です。
弁護側は、偽造されたものだとしても、作成したのは第三者だとしています。
一方、議長らに示した現物の卒業証書は代理人の福島正洋弁護士が保管。
提出を拒んできたことをめぐって、8月19日には証拠隠滅の疑いで刑事告発されています。
パソコンに卒業証書のデータが残されていたにもかかわらず、田久保前市長側はなぜ「本人は作成していない」と主張するのでしょうか?

田久保真紀前市長のPCから偽造卒業証書データが見つかった

静岡県警が田久保真紀前市長の自宅から押収していたパソコンをサイバー捜査で解析したところ、偽造された卒業証書とみられるデータが見つかっていたことが、関係者への取材で明らかになりました。
田久保前市長は卒業証書を偽造したなどとして在宅起訴されており、近く始まるとされる裁判ではこのデータが重要な証拠になるとみられています。
一方で、田久保前市長側は裁判に向けて無罪を主張する方針を固めたことも分かっています。
24日には「本人は卒業証書を作成していない」という趣旨の主張を、書面で裁判所に提出したといいます。
パソコンから偽造データが見つかったという事実と、本人は作っていないという主張。
一見かみ合わないように見えるこの2つがどうつながるのか、ここから詳しく見ていきます。
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除籍のはずが卒業証書を議長らにチラ見せしていた

そもそもこの事件は、田久保前市長が2025年5月の伊東市長選挙で当選したことから始まっています。
経歴調査票に「東洋大学法学部卒業」と記載
田久保前市長は市長選の際、報道機関に提出した経歴調査票や当選後の市の広報誌に「東洋大学法学部卒業」と記載していました。
ところが実際には大学を卒業しておらず、除籍処分を受けていたことが後に判明します。
学歴に関する情報が事実と異なっていたことが分かると、次に焦点になったのは「では卒業証書はどうなっているのか」という点でした。

匿名の投書がきっかけで除籍が発覚
2025年5月下旬、伊東市議会の議員全員に「卒業証書の偽造には注意を」と警告する匿名の投書が届きます。
これを受けて中島弘道議長と青木敬博副議長が説明を求めたところ、田久保前市長は「卒業証書」と題した文書を数秒だけ見せ、原本や写しの提出は断りました。
その後6月28日に東洋大学へ確認したところ除籍だったことが判明し、7月2日の記者会見で除籍の事実を認めています。
ただしこの時点でも、議長らに見せた卒業証書自体は「本物」という説明を崩していませんでした。
除籍だと認めたあとも「見せた証書は本物」と言い張っていた田久保前市長でしたが、捜査が進むにつれて別の姿が浮かび上がってきます。
スポンサーリンク田久保真紀前市長のパソコンに残されていた学長印を押した偽造データ

では、卒業証書のデータはどのようにして見つかったのでしょうか?
自宅から押収したパソコンをサイバー捜査で解析
静岡県警は2026年2月14日に田久保前市長の自宅を家宅捜索し、パソコンを押収していました。
捜査関係者によると、このパソコンをサイバー捜査で解析した結果、偽造した卒業証書のデータが見つかったということです。
ちなみに家宅捜索の際、弁護士の事務所で保管されていたため現物の卒業証書自体は発見されていません。
パソコンから偽造データが出てきたことは、東洋大学の学長名や法学部長名の印鑑をどうやって用意したのかという疑問にも直結します。
学長と法学部長名義の印鑑をネット通販で発注
起訴内容によると、田久保前市長は2025年5月29日ごろから6月4日にかけて、インターネットの通販で東洋大学の学長名と法学部長名義の印鑑を発注し、それを押して卒業証書を偽造したとされています。
そのうえで6月4日、議長や副議長にこの偽造証書を見せたというのが、検察側の見立てです。
田久保前市長は在宅起訴されたあとの任意聴取で、学歴の詐称そのものを否認していたとも報じられています。
検察側が指摘している印鑑の発注と、今回のパソコンのデータが注目される中、田久保前市長側はどのような理屈で無罪を主張しようとしているのでしょうか。
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卒業証書が偽物なら第三者が作ったと無罪を主張

では、田久保前市長側はなぜ卒業証書の作成を否定しているのでしょうか?
「本人は作成していない」と書面で無罪方針を提出
公判前整理手続きが進む中、田久保前市長側は8月24日、「本人は卒業証書を作成していない」という趣旨の主張を書面で裁判所に提出しました。
百条委員会での虚偽陳述にあたる地方自治法違反の罪についても、無罪を主張する方針だといいます。
では、パソコンにデータがあったことと「作成していない」という主張は、どう両立するのでしょうか。
「偽物だとすれば第三者が作成」という主張の中身
田久保前市長側の説明はこうです。
学長らの印鑑を自分で注文したり受け取ったりした事実はなく、そもそも印鑑が注文されたのは学歴詐称の疑惑が公になる前のことで、偽造する動機がなかったと主張しています。
そのうえで、卒業証書が偽物であればそれを作ったのは自分ではないという立場を取っているといいます。
ここで気になるのが「パソコンにデータがあったのなら、それだけで田久保前市長が作ったことにならないのか」という点です。
仮に卒業証書のデータが田久保前市長のパソコンに保存されていたとしても、そのデータを誰が作成したのか、誰がパソコンを操作したのかは別途立証が必要になります。
もっとも、捜査側がどのようなデータをどのような状態で押収し、作成日時や保存の経緯をどこまで把握しているのかは、現時点で詳しく明らかになっていません。
「データが本人のパソコンにあったこと」と「本人が作成したと言えること」はイコールではなく、この差をどちらがどう埋めるのかが、今後の裁判で焦点の一つになる可能性があります。。
もう一つ気になるのが、田久保前市長が正副議長に見せた現物の卒業証書が今どこにあるのかという点です。
スポンサーリンク現物の卒業証書は弁護士の金庫で保管中裁判はいつ始まる

裁判を前に、もう一つ焦点となっているのが、議長らに示された現物の卒業証書の行方です。
押収拒絶権を理由に弁護士が提出を拒否
現物の卒業証書は、田久保前市長の代理人を務める福島正洋弁護士の事務所内の金庫で保管されているとされています。
福島弁護士は、弁護士が業務上預かった他人の秘密に関わる物について押収を拒める「押収拒絶権」(刑事訴訟法105条)を理由に、捜査機関への提出を拒み続けてきました。
2月14日の家宅捜索でも、この卒業証書自体は発見されていません。
こうした対応をめぐっては、法律の専門家からも指摘の声が上がっています。

市民団体が証拠隠滅の疑いで弁護士を告発
2026年8月19日、市民グループが福島弁護士の行為について証拠隠滅罪にあたるとして、東京地検に告発状を提出しました。
告発代理人を務めた弁護士は会見で、押収拒絶権の行使自体は認められるとしたうえで、こう指摘しています。
「違法性は阻却されない」
引用元:弁護士JPニュース
つまり、捜査機関からの提出要求を拒む権利があることと、証拠になり得る物を保管し続ける行為が別の罪に問われるかどうかは別の話だという主張です。
同日付で、福島弁護士が所属する東京弁護士会への懲戒請求も行われています。
現在、事件は公判前整理手続きの段階にあり、裁判は近く始まる(秋ごろ)とされているものの、具体的な期日はまだ公表されていません。
パソコンから見つかった卒業証書のデータが、今後の公判でどのように評価されるのか。
そして、田久保前市長側が主張する「本人は作成していない」という説明がどこまで認められるのか。
卒業証書をめぐる裁判の行方が注目されます。

